秘密の花園
シミュレーション11
追放処分
「ただいま……」
私はそう言うと、おかんに見つからないように抜き足差し足忍び足で我が家の廊下を歩いていった。
リビングへと続くドアからは小さくテレビの音が聞こえる。
よし、よし。
私はぐっと拳を握った。
おかんは恒例となっている昼ドラの観賞に忙しいようだ。
このまま、何食わぬ顔で自室に入ってしまえばこちらのもの……!!
心の中で、おほほほほほほと高笑いしながら階段を駆け抜ける。
けれど、そこはマイマザー。
……20年間もこの私を育てただけあって、一枚も二枚も上手だった。
「うぎゃん!!」
私はこっそり階段に仕掛けてあった、トラップ用の紐に思い切り足を取られた。
あいたたたとぶつけた顔面を押さえていると、鈴がガシャンガシャンと耳障りな音をたてて、帰宅を知らせる。
マイマザーはすぐさまリビングから飛んできた。
「おーかーえーり、理香ちゃん」
「お、おかあたま……」
鬼のような形相のお母様を前にして、私は小さくなるしかなかった。