秘密の花園
唯香は呆れるように箱ごとティッシュを渡してきた。
「ところでお姉ちゃん。昨日はどこに行ってたの?」
……そう尋ねられると私の泣き声はピタリとやんだ。
「そ、それは……」
……言えない。言えるはずがない。
誤魔化すようにひゅーっと、吹けもしない口笛を鳴らしてみる。唯香から目を逸らして壁に貼ってあるカレンダーの日付を追う。
夏の盛りはもう終わり、いつの間には9月も半分を過ぎている。
……もうすぐ夏休みが終わる。
大学生の夏休みが長いとはいえ、そろそろ新学期の準備をしなくてはならない。
大学が始まったらソウイチさんに会える時間もぐっと減ってしまう。
花園の中で名残惜しそうにソウイチさんが手を振っている。
「理香ちゃん!!いつでも待っているよ!!」
……私もです!!ソウイチさん!!
妄想の中でソウイチさんとのしばしの別れに浸っていると、唯香が意を決したように私の肩にポンッと手を置いた。
「お姉ちゃん」
「……なに?唯香ちゃん……」
可愛い妹はこれ以上ないくらい良い笑顔で言った。