秘密の花園
サタンはかつて私に言った。
“化粧もオシャレもしないで、髪はそのまま。そんな女に価値はねーよ?”
多分、その通りだ。
ありのままの私を見てという言葉はマンガやゲームの中にしかない都合の良い幻だ。
自分を顧みて労わってやることも出来ないのに、人を幸せにすることなんて出来るはずない。
こんな女を誰が好きになってくれるって言うの?
「お姉ちゃん……?」
涙目になって唯香に尋ねる。
「私もステキ女子になれるかなあ……」
花園を捨てるわけじゃない。
私には先にすべきことがあるのではないか。そう思っただけだ。
「なれるよ!!大丈夫!!」
唯香はよしよしと私の頭を撫でた。これではどちらが姉かわかりゃしない。
……自分のためにも変わりたい。
花園の中にいたらきっと変われない。
カットモデルを嫌々やらされた時とは少し違う。
「練習しろよ?」
サタンがニヤリと唇の端を上げて笑う。
……こいつ、本物のカリスマ美容師だったのか。
少なくとも、私に変わりたいと思わせたサタンの腕前は嘘じゃないと思った。