秘密の花園
シミュレーション12
特訓の成果
「あっついなー、もう!!」
鎖骨にかかる髪を掻き上げながら、最寄りの駅から大学までの道のりを歩く。
10月だというのに、昼間はまだ暑い。
生協で買ったばかりの分厚い教科書を入れたバッグが肩に重かった。
……今日くらいはリュックで来れば良かった。
買ったばかりのワインレッドのバッグには、専門書がぎゅうぎゅうと押し込まれていて。
モラトリアムのような長い夏休みも終われば呑気な大学生だって、学業に専念する必要があるのだということを思い出させてくれた。
これから毎日レポートだの、演習だので、心の休まる日はない。
構内は授業の開始を嘆く人、久し振りの再会を喜ぶ人、シラバスを見ながら単位を計算する人などであふれていた。
皆に共通しているのは、楽しい夏休みの思い出話に花を咲かせているということか。