秘密の花園
「サタンから地獄の特訓を受けたものですから」
照れ隠しで、褒め言葉を皮肉で返す。
私に残されていた貴重な夏休みは、専ら美容院と自宅の往復に費やされたのだ。
ひとつくらい褒めてもらえないと悲しい。
「あいつ、まさに魔王だった……!!」
思い出しただけで手足がぶるぶると震えてくる。
乱れ飛ぶ怒号。容赦なく繰り出されるハリセン。襲い掛かってくるオシャレ単語。
幾度となく繰り返されるレベルアップ。倒すたびに強くなって舞い戻ってくる敵たち。
……まさにリアルRPGだった。
「えー?良い人じゃない。自分の仕事もあるのに理香の面倒まで見てくれるなんて」
まみちぃはさもおかしそうにケラケラと笑った。
「笑い事じゃないっつーの!!」
私はふくれっ面でまみちぃの背中を叩いた。
サタンの特訓がスパルタ過ぎて、お店に来るやってくるお客さんが同情してお茶菓子までくれるようになったんだぞ。
回復アイテムをくれるなんて、高級住宅街のマダムはなんて良い人なんだと感動したくらいだ。