秘密の花園
「はあ?あんた誰よ?」
「サタンの小間使いよ」
もしくは掃除婦。あるいは下僕。
嵐子はまるでゴキブリでも見るような蔑んだ目つきで言った。
「なにそれ、意味わかんない」
「意味わかんないのはあんたの方でしょ」
腕組みしてカッコつけていると、サタンが小声で止める。
「理香、やめろ」
これだけ言っておいて、途中でやめるバカがいるか!!
私はサタンを意図的に無視して続けた。
「予約してないなら、帰りなさいよ。それか、大人しく座って待ってなさい」
ゴーホームオアシットダウン!!
叩きつけるように言うと、嵐子は顔を怒りで真っ赤にした。
「覚えていなさい!!絶対、後悔させてやるんだから!!」
「けっ!!おとといきやがれ!!」
べろべろばーと小馬鹿にしながら、逃げ帰ったやつを見送ってやる。
厄介な客を追い出すことに成功した私に向かって、店内にいたお客さんからは惜しみない拍手が贈られた。
この時の私は、まさか嵐子のせいでとんでもない事態になるとは思いも寄らなかったのだった。