秘密の花園
「うわー。ホントにうちの店の看板が映っているわね」
バックヤードに置いてあるパソコンで私とあずなさんが見ているのは件のブログだ。
「すいません。私のせいで……」
昼間のことを根に持った嵐子が、店の看板と一緒にブログを書いたことは間違いないだろう。
その矛先がどうして私ではなくサタンに向いたのかはわからないが。
「理香ちゃんのせいじゃないわよ。あの時は私達も正直すっきりしたもの」
あずなさんは先ほどのように私の頭を優しく撫でると、ふうっとため息をついた。
「でも、困ったわね。うちのお店、男性店員は和馬くんだけだもの。これじゃ、バレバレだわ」
そう言うと終始無言で話を聞いていたサタンをチラリと見る。
「とりあえず、オーナーに連絡しておくわね」
「おう」
あずなさんが電話の置いてあるレジ前に行ってしまうと、バックヤードには気まずい沈黙が流れた。
「……ごめん」
「もう、気にするな」
なんで、私の方が慰められているの?
サタンは怒らなかったし、責めもしなかった。
それどころか妙に優しいから、ちょっと泣きそうになる。
「和馬くん」
やがて、電話を終えたあずなさんに手招きされてサタンはバックヤードから出て行った。
私はふたりの会話にこっそり聞き耳を立てた。
「ほとぼりが冷めるまで、店に来なくて良いって。こっちは私達で回すわ」
「悪いな、あずな」
「理香ちゃん、送って行ってあげてね」
あずなさんは励ますようにサタンの背中を叩いていた。