秘密の花園
煽り文句
“人気読モ&謎の美女による世紀の対決!!”
「なにこれ……」
私は構内の至る所に貼られたポスターを前にして、口をポカーンと開けるしかなかった。
肩に引っ掛けていたバッグを落としそうになって、慌てて持ち手の位置を直す。
「頑張れよー」
「応援してるね~!!」
「……どうも」
私はそう答えるとこそこそと顔を隠しながら、目的の講義室へと急いだ。
朝から声を掛けてくる人は一人や二人どころの話ではない。
学食で嵐子と大騒ぎした一件は既に大学中に知れ渡るところとなった。
学祭を2週間後に控え、当人を置いてけぼりにしながらも、私は確実に注目を浴びていた。
構内の中央にある芝生広場には早くも特設ステージがお目見えしていて、どこかしらトンカチの音が派手に鳴っている。
……皆、浮かれている。
学生なんだから、勉強しろよ!!勉強を!!
行き場のないストレスを発散するように心の中で叫ぶと、風に吹かれて壁面から剥がれたビラが顔面に飛び込んできた。
ポスター同様、自分の姿がでかでかと載っているビラを顔から引っぺがす。
それにしても、写真なんていつの間に撮ったんだ?