秘密の花園
私がサタンだったらきっと怒り狂う。
手を掛けてやったのに恩を仇で返されたと思ったっておかしくない。
……ホントに役に立たない女だ。
見た目は変わっても、中身がちっとも成長していない。
あ、自分でもへこんできた……。
私は滲んできた涙をこらえて、水瀬さんの買ったマンガを紙袋に詰めた。
「理香ちゃん、佐田さんは口が悪いし態度もデカいけど自分を庇ってくれた女の子に怒るような人じゃないよ」
水瀬さんはそう言うと財布からお札を取り出すと、レジのトレイに置いた。
「自分にも他人にも厳しい分、ちゃんと努力は認めてくれるし、良い先輩だよ。俺も昔はハリセンでバシバシやられていたからわかるよ、それくらい」
水瀬さんもあのハリセンの餌食に?
そう思うと何だか笑えてきて、これまで一度も感じた事のない親近感が湧いてくるから不思議だ。
「じゃあ、またね」
会計を済ませてお釣りを返すと水瀬さんはバイバイと手を振った。
「あ、マンガ!!」
「理香ちゃんが届けてあげて」
……爽やかに告げる水瀬さんの顔には、“確かめてごらん?”と書いてあった。