秘密の花園
嵐子と違ってオタク星人の私がこんなハイヒールで颯爽と歩けるはずがない。
カクカク、よちよち、覚束ない足取りで、やっとの思いでステージの中央までたどり着く。
ポージングもくそもないので、その場に直立不動だ。
ただし、気合だけはみなぎっている。
「それでは、原田さん。自己PRをどうぞ」
司会の男が自己PRを始めるように促す。
ミスキャンにエントリーしてから、私の特技ってなんだろうと散々考えた結果……。
「マリサンカートなら絶対誰にも負けません」
私はポケットからジンテンドーTSを取り出して、頭上に掲げた。
偉大なる乙女ゲーの神様が地上の人間に与えた素晴らしき発明品だ。
私のスイートハニー!!
……まあ、乙女ゲー以外のゲームも出来るけれど、そこはちょっと脇に置いておこう。
とにかく、私はこの日のためにマリサンカートの腕を磨いてきたわけだ。
ちなみにマリサンカートとは、国民的人気キャラクター“マリサン”とその仲間たちが登場する複数人プレイ型レーシングゲームのことである。