秘密の花園
「ほら、座れよ。代わりにやってやるから。その様子だとなんにも支度できてないんだろう?」
うっ……。
流石、魔王。痛い所を突いてくる。
私は結局、大人しくサタンの言うことに従ってベンチに座った。
サタンは背負っていたメッセンジャーバッグから、メイク道具と髪を結うのに必要な道具一式を取り出した。
美容師ってそういう道具を持ち歩いているものなのか。
聞くだけ無駄な気がした。だって、魔王なら四次元ポケットくらい当たり前に持っていると言いそうだ。
「目を瞑れ」
「はーい」
サタンは顎を持ち上げて、私の顔にパウダーを振りかけた。
「お前は本当に予想外の行動ばっかりするよな」
「……うるさい」
アイラインを引きながら、クツクツと笑うサタンはさも楽しげだ。
「読モに喧嘩売ったんだって?記事を訂正させるために」
「そうよ。いけない?だって、ムカついたんだもん」
「お前がムカついてどうすんだよ」
アイシャドウにチーク、つけまつげにマスカラ、ビューラー。
オシャレ道具たちは次々と、私の顔を作り変えていく。