秘密の花園
どうして?
驚きで目を見開く。
わなわなと唇が震えた。
ここがステージ上ではなかったら、倒れていたかもしれない。
水瀬さんは会場の遠く向こう、最後列で他の見物人に混ざってステージを見ていた。
ぶわっと薔薇が咲いたような錯覚に陥る。モノクロの世界にそこだけがカラーで映っていた。
私はそんな豆粒みたいな小さな姿でも水瀬さんを見つけることができる、己の馬鹿さ加減を思い知った。
……やっぱり、まだ水瀬さんが好きなんだ。
手が届かなくても。結婚していても。
まだ、好きだ。
甘い痛みが胸を走る。
水瀬さん。
私は。
あなたに好かれたくて。
住処である花園から遠く離れ。
こんなところまでやってきてしまいました。
少しはあなたの瞳に映ることができたでしょうか?
こんな独り言なんか聞こえていないはずなのに、水瀬さんはふっと表情を緩めた。
……私にはそれで充分だった。