秘密の花園
KissHug
「どこに行くつもりですか!?」
私は係員が止めるのも聞かず、控室から飛び出した。
ウェディングドレスの裾を思い切り持ち上げて全力疾走する光景は、学祭において異常だった。
でも、ミスキャンが終わってからでは遅い。
だって、水瀬さんが行っちゃう!!
「水瀬さん!!」
ミスキャン会場にいる群衆に向かって大声で名前を叫ぶと、水瀬さんは私に気が付いて優しく微笑んでくれた。
「お疲れ様、理香ちゃん」
「み、水瀬さん……」
走ったせいでぜいぜいと息が切れている。
浅い呼吸を繰り返していると、水瀬さんは心配そうに顔を覗き込んできた。
「大丈夫?」
「……はい、大丈夫です」
ふうっと息を吐き出すと、ようやく返事が出来た。
もう嫁に行くまでウェディングドレスなんて絶対に着ない。頼まれたって着るもんか。
「水瀬さん、どうしてこんなところに……?」
「佐田さんと一緒に理香ちゃんの勇姿を見物しにきたんだよ。佐田さんとは途中ではぐれちゃったけどね。まったく、どこをほっつき歩いているんだか……」
そう言って水瀬さんは困ったように携帯を見つめた。佐田さんからの連絡待ちなのだろう。
「理香ちゃんこそ、その格好でどうしたの?」
水瀬さんは私の着ているウェディングドレスを見て、首を傾げた。
これではステージからそのままやって来たことがバレバレだ。
「あの……お話があるんです」
……魔法が解けるその前に。