秘密の花園

水瀬さんは佐田さんを探しに、騒がしい学祭へと戻って行った。


……終わった。


数か月に及ぶ初恋はたった数分で終わってしまった。


私も、戻ろうかな……。


ミスキャンパスの開票結果を聞かないことには、安心して花園に入り浸ることが出来ない。


「よう。話は終わったか?」


……そこはかとなくイヤーな予感がした。


私は恐る恐る背後を振り返った。


ベンチに腰かけていたのは間違いなく佐田さんだった。


「聞いてたの!?」


「人聞きの悪いこと言うなよ。つい、さっき来たところだ」


……嘘だ。


つい、さっき来たところの人間がこんなに都合よく現れるもんか。


告白から最後のやり取りまで、一部始終見られていたに決まっている。


出歯亀ですか、この野郎。


「私、水瀬さんに振られた」


「そうか」


「水瀬さんの奥さん、あずなさんだったんだね」


「そうだな」


いつもの調子でからかわれると思っていたのに、佐田さんはやけに静かだった。


……一応、気を遣われているのか。すんごく気持ち悪い。


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