秘密の花園
意気込んで走ってきた自分がバカみたいだ。
スイートハニー…。
しばらくその姿は拝めそうにない。
落胆のあまり、窓にへばりついて座り込んでいたら、なんと開かないはずの扉が開いた。
「あれ?どうしたの」
…まるでヒロインを助けにくるヒーローのようだった。
「水瀬さん!!」
店の扉から顔を出したのは水瀬さんだった。
「こんにちは」
今日も素敵な笑顔を浮かべながら、水瀬さんは私のもとに歩み寄った。
「こ、こんにちは!!」
わわわっ!!
私は服の埃を払い、水瀬さんにペコリと頭を下げた。
「ごめんね。今日はお店定休日なんだ」
申し訳なさそうに頭を掻く水瀬さんに向かって慌てて首を振る。
「あの…髪を切りにきたわけじゃないんです…。わ、忘れ物をとりに…」
取りにきたんです。スイートハニーを。
「もしかしてあれかな?」
水瀬さんは思い出したようにポンッと手を打った。私の予想通り、TSは美容院にあるようだ。
「とりあえず中に入ってろうか。ここじゃ暑いし」
「は、ははは、はいっ!!」
私はドクドク鳴る心臓を落ち着かせながらエアコンの効いた店内に入った。