秘密の花園
「ありがとうございました~」
デブが立ち読みを終えて店から出て行くと、店長とふたりきりになってしまった。
悲しいかな、本日の売り上げまだ2冊。
作った大量のブックカバーが消費されるのはいつのことやら。
「ひまだ…」
客がいないのをいいことに、ぐてっとレジ横に突っ伏する。
売れなきゃ補充も発注の必要もない。
週刊誌や月刊誌の類は既に陳列済み。
つまり何もすることがないのだ。
さすがにバイト中にゲームをやらないくらいの分別はある。
唯一の救いはエアコンが効いていて、ただ座っているだけでも快適だということだ。
炎天下の中、走り回っていた数時間前の出来事がもはや遥か昔に思えてくる。