ヒマリュウ-Ⅲ-
ロビーはふたつの部屋を繋いでいる場所。
分かりやすく言えば、両方の部屋から見える、唯一の場所。
「遅れてすいません」
「いいわ。どうせ桃のせいでしょうから。…てか、あたしにもタメ口でいいわよ?」
「…いや、さすがにそれは…」
…舞、さすがにそれはムリじゃないか?
とりあえず、自分の上に立つ人だし。
…とあたしがいくら思っても、それが舞に伝わるはずもなく。
「えー…いいじゃない。…それとも、桃以外とは関わりたくないって?」
………舞さん?
もうそれは命令じゃなくて、脅し入ってますよ?
当の坂野は、そんな舞にどうしたらいいのか分からない様子。
『舞、坂野の気持ちも考えてあげなさいよ』
「そうやって…仲間はずれ…――」
『舞…?』
「…分かったわよ」
いくらあたしが下っ端だとしても、坂野の立場だったとしても、絶対無理だ。
これだけは断言して言える。