ヒマリュウ-Ⅲ-
何でこんなに怒られているのかわからず心なしか泪目の恭哉に、少し同情にも似た感情を感じないわけでもないが、
こうしてあたしは怒りの矛先を向けられることもなく、無事なのだからいい…とさえも思う。
…酷いねあたし。
『ありがとね、冬可』
「ああ」
…でも、こうして優しい笑みを浮かべてくれるから。
好きなんだ。
―――――――…
――――…
「…すいませんでした」
…あれから、絶対に口をふさがれないと
確信のあったあたしは舞を起こして事情を説明。
それを聞いた途端寝起きにも関わらず、表情ひとつ変えないままむくっと起き上がると、
怖くて…かどうしてか、またしても俯いている恭哉に近寄るなり頭をげんこつで一発。
…絶対痛いよ。
音が…ね、もう違う音だったもの。
そして黒い黒いオーラを出して一言、「…謝れ」そう呟いた。
そんな舞に対してさすがに恭哉も、さっきまでは反省の色も見せていなかったが、
呟くように謝った。