ヒマリュウ-Ⅲ-
ひとつは、空気を変えるため。
もうひとつは、無言の圧力。
…本当は見せたくない、というね。
『緋舞、おきてー』
これで尊敬は忘れないかな?
とか考えながら、緋舞が寝ているはずの布団をめくり声を掛ける。
『……え、緋舞?』
…が、そのあるはずの姿は見当たらない。
上の龍のベッドも覗いてみるが、案の定いない。
『…え、なんで…緋舞?!』
クローゼットの中、
ベッドの下、
カーテンの影、
テレビの後ろ、
ソファーの後ろ、
ソファーの前……。
心あたる場所を全部探すが、その待ち望んだ姿どころか
気配さえ感じることができない。
『……緋舞…』