命しぶとく恋せよ乙女!
「やっぱり怒ってる!? 怒ってるの!? あぁんもう心配しないで! 絶対浮気なんかじゃないから! 私には多架斗くんだけなの! 多架斗くんだけを愛してるのっ!」
「おっ、おい! 誤解を招くようなこと言うなよ!」
「えっ、誤解? 誤解じゃないよ私の愛は多架斗くんだけに向けられてるの! 錯覚でも思い込みでもなくて私は多架斗くんが好きなの! 大好き! 世界中の誰よりも多架斗くんを愛せるもんっ! きゃ、璃梨ちょっと恥ずかしい!」
恥ずかしいと思うならその口を閉じろー…と誰もが思いながらも口には出さなかった。聞く耳持たないからなこいつ。
愛沢は興奮したまま隣にいる岡田と山瀬を見ると「きゃっ!」と声を上げた後深々と頭を下げた。
「挨拶するの忘れてたっ! 初めまして! 友人の山瀬くん学級委員の岡田さんっ! 多架斗くんの彼女の愛沢です!」
「劇的にちがう!」
事実を捏造してきた。
「うん、よろしく愛沢さん。学級委員の岡田だよ。こいつチビだけどよろしく!」
「よろしくって何!?」
乗ってきた。
「女って怖…」
「まったくだ…」
同情してきた。
山瀬と俺の疲れた様子など気にも留めず、早くも岡田と愛沢はなじんでいる。…あれ、今思ったけどこの二人相性いい?
しかし何故愛沢がこの二人を知ってるんだ…? 俺の疑問に気がついたのか、愛沢がウインクしながら俺に答えてきた。
「うふふ、多架斗くんのことでわからないことはないよ! 住所やメアドから今日のパンツの柄まで知ってるんだから!」
「ほ、ほーぉ…言ってみろよ!」
漫画みたいなことを言ってくる愛沢だ。どうせでまかせか何かだろう。でなきゃでたらめだ。
「赤のストライプ」
「誰かぁぁああぁ!!」
110番通報してくれ―――っ!!、とパニくる俺を「落ち着けっ!」と山瀬が取り押さえる。落ち着いてられるか。本当に知ってやがったぞこいつ。しかも当たってるときた。
「ちなみに典型的なトランクス派で、赤パン健康法を信じてるんだよねっ! だから下着の色は赤が多いけど服の好みは翠、青の寒色系がベース。特に最近気になっているのはNIKEの…」
「やっ、やめてあげて愛沢さん!」
「? 何で山瀬くん?」
「えっと、えーと、ほら! こいつ照れ屋だから! ね!」
「あっ、そうだった!」