【短編】素直じゃない



「ううん、なんでもない」


彩音にそれだけ言って、机に突っ伏した。


智樹のバカッ!アホ!


……バカ。


「…直」


上から智樹の声が聞こえてきたけど、無視した。


さっきあんなに拒否ってたくせに、何でくんの?


「…直、話がある」


「あたしはない」


机に顔を伏せたまま言うと、無理やり顔を上げられた。


「お願い、俺の話聞いて?」


あまりにも真剣な顔をして言うから、あたしは静かに頷いた。


話ってなんだろう。


もし何かひどいこと言われたら、あたし立ち直れないよ。


「ここだと話しにくいから、屋上行こう」


「うん」


返事をして、二人で屋上に向かう。


「あのさ」


屋上について、先に口を開いたのは智樹だった。


「何?」


「さっきはごめん。俺別に怒ったわけじゃないんだ」


「……じゃ、何?」


怒ってないなら、さっきの態度は?


何だったの?



< 6 / 16 >

この作品をシェア

pagetop