王子様の秘密-上-



「拓哉!」

「成弥ナイスパスさんきゅー!」



仲間と笑顔で言い合う成弥。


“椿谷君”じゃなくて、“成弥”の顔だ。


…あんな顔できるなら、隠さなくてもいいのに。

ふと思った。


そんなとき、私の周り…会場中からは黄色い声が上がる。

そして、汗を拭いた成弥が、こっちを見た。



…すごい嫌そうな顔してる。


きっと、口にしたら…



「“うるせぇ”って感じだね、成弥の顔」

「ほんとほんと。
俺達がジャマしなくても、普通にジャマ入るね」

「まっ、成弥には慣れてることだし」

「どうせまた勝つよね」



あはは、と楽しそうに笑う賢君と廉君。



「成弥ばっか見せやがって…
負けたら許さねぇ」



隣では、何やらぶつぶつ呟く恭平君。




素直になればいいのに…


文句言ってるようだけど、ほんとはみんな応援したいんだよね?



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