王子様の秘密-上-
「なんで?」
さっぱり意味分からない~!!
私が拓哉君の名前出しちゃいけないの?
それとも、“拓哉君”はNGなんですかっ!?
あっ!
じゃあ…
「拓哉!!」
「はああぁぁぁ!?」
「やーごめんなさいごめんなさい!!
やっぱり拓哉君です!!」
「…お前から拓哉の名前出ると、イライラすんだよ」
「だから、なんでイライラするの?」
成弥は私を見て、呆れたようにため息をついた。
言ってくれなきゃ分からないよ!!
「…鈍感」
「なっ!?
コミュニケーションってものがあるでしょ!」
足りないもん!!
分かるわけないじゃん!!
成弥のバカ!!
「普通に分かれよ…」
「もう知らないっ!!
成弥なんか置いて先に帰るから!!」
私は横を歩く成弥を足早で抜かした。
どんどん二人の距離を伸ばして…
「…そこ逆。
右じゃなくて左」
「……ゔ……」
私の足が止まった。
そうだよ、分かるわけないよ!!
適当に勘で行った私がバカだった!!
「陽菜は迷子になりてぇの?」
後ろからすぐに聞こえた、と思ったら…
余裕で抜かされた私。
成弥には意地悪そうな笑みがあって…
「成弥の意地悪っ!!」
成弥の大きな背中に向かって叫んだのだった。
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