王子様の秘密-上-
「家、ここね」
「あっはい!
おじゃましま…」
ドアを開けられて、“入って”と促される。
入ろうと思って、足を踏み入れたとき、後ろから腕を掴まれた。
「え?」
「桜木さん…
やっぱり初めに言っとくよ」
「はい…?」
そのときに初めて、椿谷君の悪戯っぽい笑い顔を…彼の素顔を目の当たりにした。
「今からのが本当の俺だから…」
「へ?」
“二度は言わない”と有無を言わせない顔で、私は再び促された。
気のせいかな…?
このときの私は、何も理解できていなかった。
ただ、椿谷君に掴まれた手が熱を帯びていたことだけは覚えていた。
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