王子様の秘密-上-

[成弥ver,]


委員会の用で、陽菜のクラスの奴に呼ばれた。

別に、俺が行かなくても良かった。

代わりに持って来てもらう手もあったが、俺はやめた。


アイツ、何してんのかなー…


ふと気付くと、そんなことを考えてしまっていたからだ。


陽菜は俺が教室に入ったことも知らないで、机に伏せて深川と話していた。


用も済んで、自分の教室に戻ろうとしたとき…



「ー……理想を演じてた上辺の“椿谷君”だもん」



小さかったけど、陽菜の声が聞こえた。


それに…

俺の話か?



「あ、ちょっ…陽菜?」



さりげなく陽菜の方へ行ってみたが、アイツは気付かないままで…

俺に気付いた深川が焦っていた。



「本当の成弥は意地悪で変態で、本当に最低な奴…
あんな奴好きじゃないも…」



俺は、持っていた段ボールを机に伏せたままの陽菜の頭に軽くぶつけてやった。



意地悪で結構。

変態で結構。

最低で結構だよ。


俺だって、陽菜なんか好きじゃねぇ。


でも…

なんかすごく苛立った。


陰口を言われるよりも…

すごく。



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