王子様の秘密-上-



「陽菜ちゃん、ごめんね。
あの息子が…」

「私の方こそ悪いんです!!
成弥は悪くないです!!」

「…いいえ。
悪いのは、成弥よ」

「違うんです!!」

「陽菜ちゃん!!
もういいから…」



良くないんです…っ!!

なんでこうなるの…?



「陽菜ちゃん…泣いてるの?」

「…なっ…泣いてません!」

「そう」



泣くか…

泣くもんか…っ

ここで泣いたら、余計に成弥に迷惑をかけちゃう…


お願い!

涙、止まってよ!



私は、美沙子さんから背を向けた。

…涙が見られないように。



「…陽菜ちゃん、顔洗ってらっしゃい」

「…はい…」



きっと、美沙子さんにはバレバレだったよね?




リビングを出るとき、ちょうど電話がかかって来たのを覚えている。


そして、美沙子さんは何かを話していた。



私は気にも止めず、ふらついた足取りで洗面所まで行った。




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