王子様の秘密-上-



「成弥、恵理子さんの前でもその態度だったら、容赦しないわよ?」



恵理子…つまり、私のお母さん。

幸い(?)、あのあとお母さんはトイレに行っていたため、椿谷君の会話は聞いていない。


…と、そんな絶妙なタイミングでお母さんが帰ってきた。



「すみませんね、こんな時に…」

「いえいえ、気にしないで。
恵理子さん、こちらが成弥です」

「初めまして、成弥君。
陽菜が迷惑かけてごめんなさいね」



椿谷君は、飲んでいた紅茶の入ったティーカップをテーブルに置いた。



「いえ、僕の方こそ。
男しかいなく、母も寂しがっていたので、桜木さんには来てくれて助かりました」

「まぁ、礼儀正しくて、陽菜にも見習ってもらいたいくらいだわ…
それに、成弥君かっこいいし、陽菜と違ってモテるのでしょうね~」

「いえ、そんなことありませんよ」



…あ…


椿谷君の態度に感心するお母さんの隣で、恵美子さんは安心したような顔をしていた。

その表情を見て、私は椿谷君が身内には無愛想だと言った意味を理解できた。



「桜木さん」

「はいっ!?」



急に話を振られて、思わず背筋を伸ばした。


椿谷君を見ると、学校でよく見るあの笑顔…



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