王子様の秘密-上-
あぁ、泣きそう…
私、涙もろいなぁ…
部屋で荷物をまとめていると、ドアをノックされた。
「いい?」
「あっ、うん」
成弥の声が聞こえたと思ったら、部屋のドアが開いた。
「…終わったのか?」
「うん…
それほど荷物持ってきてなかったから」
「そっか」
成弥は笑った。
ごめん…私は笑えそうにないよ。
「成弥」
「ん?」
「ありがとう」
一瞬きょとんとした成弥。
でも、すぐに笑った。
「なぁ、陽菜…」
「うん」
「これ、受け取ってくれねぇ?」
「……え?
なに…?」
「チューリップ」
……はい?
いやいやいや!!
それは、見て分かるんですけど!!
目の前に出されたのは、黄色のチューリップ…の造花。
「…へ?」
「やるって」
「あ、うん…
ありがと?」
「なんで疑問形なんだよ」
また笑われた…
私は何の風の吹き回しかと思っただけだった。
チューリップに秘められた想いなんて…
私はまだ知らなかった。
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