王子様の秘密-上-
玄関の向かい側にある階段をあがると、突き当たりに部屋があった。
弟の部屋、とだけ紹介された。
その部屋の右側に廊下が続いていて、ドアが3つ並んでいた。
「ここがあんたの部屋」
「はい…」
“あんた”って、私ですよね?
さっきまで“桜木さん”とか言ってた人が…
「ついでに、左が俺で、右が兄貴の部屋だから」
「はい…」
「俺と兄貴の間で悪いんだけど…
1番日当たり良いから、この部屋」
「あっありがとう」
3つのドアのうち、真ん中が私の部屋らしい…
部屋のドアを開けようとする私の後ろで、椿谷君が笑っていたのに気づかなかった。
「あ、そうだ」
「?」
「この部屋、出るから…」
「へ?」
「夜、気をつけろよ」
「…………!!!!」
無理、むり、むりっ!!!!
私、怖いの苦手なのに!!!
私は涙目になった。
「嘘だし。
出るわけねぇじゃん」
「…ほんと?」
「あぁ」
椿谷君は、呆れたような、はたまた楽しがっているような笑い方をしていた。
「よかったあ~…」
私は安心してドアを開けた。
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