王子様の秘密-上-



私の部屋は、クリーム色の壁紙に包まれていて、日当たりが抜群に良かった。

私の荷物が入ったバックも、ちゃんと運ばれていた。



「椿谷君っ」

「成弥」

「え?」

「この家の人みんな椿谷なんだけど…
だから、成弥」

「な、成弥…君?」



成弥君はベッドに座り、はぁー、と呆れたように息をついた。



「“君”も要らないから」

「な、成弥……君っ」

「…バカにしてんの?」

「まさか!!
とんでもないで…きゃ!?」



突然、強い力で手首を引っ張られ…

立っていた私はバランスを崩して、後ろ向きに倒れてしまった。



「言っただろ?
こっちが“素”だって」

「成弥…君?」



ベッドに倒れた私の目に、上から覗き込む成弥君の顔が映った。



「だから…成弥」

「な、成弥っ」

「なに?」

「…………!!」



満足したような顔に、言葉を失った。



「あと、敬語遣うな。
学校じゃねぇんだし、めんどくせぇ…」

「…は、はぁ…」



そして、ギッと睨まれた。


え…何もしてないよね!?



「その、話す前に詰まるのやめてくれない?」

「あっごめ…
その、緊張して…」

「緊張?」

「はい…じゃなくて、うん」



ふーん、と勝手に納得したような成弥の声が部屋に響いた。



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