王子様の秘密-上-
「陽菜ちゃん、制服洗うから着替えて来なさい。
成弥もいつまで制服着てるの」
「はいっ
ありがとうございます」
「はぁ、めんどい…」
部屋に向かう私達の背中から、美沙子さんと慎吾さんの会話がしていた。
「なんだ?
二人とも帰ったばっかりか?」
「いいえ、違うのよ。
恵理子さんが来ていたから…」
「恵理子さんが?
あぁ、そっか、明日だもんな。
伸は相変わらず元気そうか?」
「来年には戻って来れるそうよ」
「それは良かった」
…伸って、お父さんの名前だ。
慎吾さんとお父さん、知り合いだったのかな…?
階段をのぼりながら、考えたけど、二人の接点が見当たらなかった。
「おい」
「なに?」
「見えてる」
「はい?」
「………やっぱり最低!!」
「“やっぱり”ってなんだよ?
自分から初めに階段あがったんだろ?」
「~っ!!
いいから、先行ってよ!」
「はいはい」
狭い階段ですれ違う瞬間、成弥に「バーカ」って言われた。
私はむかついて、後ろから成弥の背中に向かって、あっかんべーをした。
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