王子様の秘密-上-
「お母さんね、しばらく遠くに出張しなきゃならないのよ」
「へぇ、頑張ってね」
お父さんは単身赴任中なため、今は家に私とお母さんの二人で暮らしている。
「うん。
陽菜には、悪いんだけど…」
「あー、うんうん。
私なら別に大丈夫だよ」
一人暮らしなんて、できないわけじゃない。
自炊がちょっと面倒だけど…
心配しないで、お母さん。
そんなことを考えながら、スパゲッティを食べたとき。
お母さんは言いました。
「ほんと?
それなら、お母さん安心して出張できるわ。
じゃあ、今から椿谷さんに電話するから…」
「うん、頑張っ…ごほごほ…は!?」
あまりの驚きに、スパゲッティをひっかけた。
ちょっと待ってよ!!
今、何て言った!?
“椿谷さん”!?
少し前の記憶を引き出す…
『椿谷君…知ってるでしょ?』
『嫌い?』
待てっ!!
待ってよ!!
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