王子様の秘密-上-



「…なぁ」

「ん?」

「“桜木 陽菜”って奴、知ってるか?」

「…成弥、知らねぇの?」

「だから聞いてんだろ。
なに、有名なの、そいつ?」



お前くらいね、と隣で恭平が言った。


高峰 恭平。

俺のダチ。



「あっ、あの子だよ。
桜木 陽菜ちゃん」

「どいつ?」



恭平が指差した方を見ると、二人の女が楽しそうに話しながら歩いていた。

一人は色気のある女らしい奴。

隣にいるのは…

同い年に思えない童顔な奴。



「どっち?右?」

「違う、左」

「は?左って…
あれのどこが有名なわけ?
ロリコンかよ」

「成弥、桜木ファンに恨まれるぞ?」

「ははっ
恨むもんなら恨んでみろよー…って、恭平?」



恭平は、ぼーっとアイツを見ていた。


まさか…



「恭平、好きなのアイツ?」

「…は!?
ば、バカ言うなよ!!」

「ふーん…
恭平って、ロリコンかよ」

「違ぇって!!
つか、普通にかわいいだろ!?
あーかわいいな、桜木ちゃん…」



まじかよ…


俺はどうやら、恭平の好きな奴と一つ屋根の下で暮らすことになるみたいだ。


アイツ…桜木、俺ん家に居候するんだってよ。


この平和そうな顔で桜木を見る恭平に言ってやりたかった。



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