王子様の秘密-上-



たしかに…

桜木はかわいかった。


周りと比べれば…


でも、俺はこんな童顔タイプじゃねぇ。



どうしようかと思った。

初対面で、俺の表の仮面に騙されているのは分かってたし。

裏を見せて、ばらすのも気が引けなかった。



「いいなぁ、桜木ちゃん…
ああいう子見てると、守ってやりたくなる」

「変態かよ」

「ああ、変態で結構!
俺はいつか絶対桜木ちゃんを、こうぎゅっと抱きしめ…」

「あ、桜木がこっち見た。
今の恭平の言葉、聞こえてたんじゃねーの?」



隣で恭平が真っ青になるのが分かった。


桜木 陽菜は、たしかにこっちを見ていた。


こっちを…

俺を…


俺は、桜木のその瞳に、何かを思い出しそうな感覚があった。

桜木が立ち止まり、俺を見るから…

だから俺も桜木を見ていた。

表の顔を作ることも忘れていた…



「陽菜、何してんの!
遅刻するよ!」



桜木が立ち止まっていたのに気付いた女が、振り返って桜木を呼んだ。



「あっ、待って…きゃ!」



あ、こけた…



「はぁ~…
何してんの、あんた」

「ごっごめん!」



呆れる女に必死に頭を下げて謝る桜木。


んなことしてたら、遅れるだろ?


案の定、チャイムが鳴ってから、ふと廊下を見ると、走る桜木と友達の女の姿を見た。



「椿谷君、何笑ってるの?
おもしろいことあった?」

「あ、ううん。
ちょっと思い出し笑いしただけだよ」

「そうなんだっ」



隣の席の女に聞かれて、答えたけど…

桜木 陽菜、アイツおもしろいかもな…



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