王子様の秘密-上-
「…やだ」
「え?
やっぱり痛いの?」
「違う…違うよ。
こんなの椿谷君でも、成弥でもない…」
「あー、そうだね。
俺も始めは戸惑ったよ」
どんどん離れて行く成弥の背中を見て考える。
どうして…
そこまで自分を偽るの?
「…辛くないのかな?」
「うん、辛いと思う。
でも、成弥は不器用だから、あれしか自分を守れないんだよ」
「……………」
「桜木ちゃん」
「?」
隣を見ると、辛そうな顔をした恭平君がいた。
「俺じゃ、無理みたいなんだ。
成弥をあの殻から救うのは…」
「恭平、君…?」
「桜木ちゃんならできる、できるよ。
成弥を助けてあげて…
アイツあのままだと、そのうち自分見失うよ」
「そんな私、無理だよ!
長年一緒にいた恭平君が無理だったら、なおさら…」
「桜木ちゃん」
なんで?
この人は、こんなに切なげなんだろう…
「俺、長年一緒にいたからこそ分かるよ。
桜木ちゃんならできる。
二人がどんな関係なのか知らないけど、桜木ちゃんなら…」
恭平君…
「恭平、桜木さん」
“椿谷君”が私達を呼んだ。
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