王子様の秘密-上-



「……………」

「あっ、ちょっと、桜木ちゃん!?」



私は、“椿谷君”を無視した。

成弥を無視した私は、すれ違いざまに挨拶した。



「おはよう、“椿谷君”」

「……桜木さん、おはよう」



成弥は、一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにあの笑顔を作った。

そうだ、これで良いんだよ。

恭平君には悪いけど、成弥がどうなっても知らないし。

しょせん、私達は他人だ。



「ちょっと、桜木ちゃーん…」



後ろから私を呼ぶ恭平君の声がしたけど、振り返らなかった。




“椿谷君”なんか嫌い…


成弥なんか、嫌いだ…




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