王子様の秘密-上-
えっと…
あれ、もういない!?
私は知っていた。
成弥は、昼休みになると、どこかへ消えてしまうことを…
彼の行動は、友達だろうが、ファンだろうが、誰も把握していない。
つまり、昼休みに消えられてしまったら、成弥を捕まえるチャンスがないと同然だった。
嘘…
あんなに早く来たのに…
成弥のクラスの前で肩を落としていると、誰かに肩を叩かれた。
「きゃっ!?」
びっくりして振り向くと、そこには名前の知らない男の子が笑顔で立っていた。
隣にも男の子がいて…
私は、その3人の男の子の迫力に負けそうだった。
「桜木 陽菜さん、だよね?」
「え?
あ、はい。
どうして、私の名前…」
「有名じゃん、桜木さん」
なぁ?と、男の子は互いに頷き合う。
私って、有名…?
そんなに遅刻してないよ、ね!?
うん、きっと気のせいだよ!!
「一人で頷いて、何してんの?
やっぱり桜木さんかわいいね♪」
「え、そんなこと…」
「ね、今から暇?
俺達と一緒にお昼…」
「その、私…」
途切れることなく話かけてくる3人に対し、困る私…
ど、どうしよう!!
あっ、そうだ成弥に用!!
って…
成弥いないんだった…
「桜木さん」
「…?」
「どうしたの?
うちのクラスに何か用でも?」
「…み…椿谷君!!」
危なく“成弥”と呼びそうだった。
男の子達の後ろから声をかけてくれたのは、他でもない…
成弥だった。
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