王子様の秘密-上-
「なんだ、成弥も桜木さん目当てかよ」
一人の男の子が諦めたように言った。
成弥は相変わらず“椿谷君”のままの笑顔でいる。
…私を見ずに。
「違うよ。
僕はただ、教室入りたかったから声かけただけ」
「成弥ひでぇな」
「椿谷らしくねぇ」
笑いながら言う3人。
…ひどいよ、成弥。
昨日喧嘩したけどさぁ…
そんなこと言わなくても…
明らかに“ジャマ”と言われたような衝撃。
「…嘘だよ。
本当は僕、桜木さんに用あったんだよね」
「へ?」
「ほら、この前廊下で先生に言われたことで、聞きたいことあって…」
「そんなこと…」
あったっけ…?
「ってことで、悪いけど、桜木さん借りるね?」
「え?」
「ま、先生絡みならな」
「相手は成弥だし」
「じゃあ、今度お昼一緒に食べようね、桜木さん」
「へ?
あ、うんっ」
「桜木さん、ちょっと出れる?」
笑顔のまま成弥に言われ、素直に私は頷いた。
…言わなきゃ、栞のこと。
あと、さっきのお礼も。
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