王子様の秘密-上-



「なんだ、成弥も桜木さん目当てかよ」



一人の男の子が諦めたように言った。

成弥は相変わらず“椿谷君”のままの笑顔でいる。

…私を見ずに。



「違うよ。
僕はただ、教室入りたかったから声かけただけ」

「成弥ひでぇな」

「椿谷らしくねぇ」



笑いながら言う3人。


…ひどいよ、成弥。

昨日喧嘩したけどさぁ…

そんなこと言わなくても…


明らかに“ジャマ”と言われたような衝撃。



「…嘘だよ。
本当は僕、桜木さんに用あったんだよね」

「へ?」

「ほら、この前廊下で先生に言われたことで、聞きたいことあって…」

「そんなこと…」



あったっけ…?



「ってことで、悪いけど、桜木さん借りるね?」

「え?」

「ま、先生絡みならな」

「相手は成弥だし」

「じゃあ、今度お昼一緒に食べようね、桜木さん」

「へ?
あ、うんっ」

「桜木さん、ちょっと出れる?」



笑顔のまま成弥に言われ、素直に私は頷いた。


…言わなきゃ、栞のこと。


あと、さっきのお礼も。



,
< 74 / 175 >

この作品をシェア

pagetop