僕と私で友達
22時。
あの噂は実現化した。

『日本全域の電力が機械の誤作動により停止する』


冷蔵庫も炊飯器もエアコンも全部が停止

突然の暗闇。
真っ暗の静けさが俺を襲った。
父さんは、まだ帰ってこない。

怖い
暗い
熱い
涙が止まらなかった。
パジャマのまま玄関から飛び出した瞬間、腕を誰かに掴まれた。

「ドコ行くんだよ!一人で危ないじゃん!!」

「鈴…熱いし暗いし怖い…」

あの時、懐中電灯を持った鈴に縋り付いて大泣きした。
鼻水もよだれも一緒に溢れ出して、息もロクに出来なかった。

「泣くなよ成海、ちょっと溶けてるけどアイスあげるから」

停電の間、俺は鈴ん家のベランダで溶けかけのアイスをほお張った。
甘いアイスをよだれと鼻水でいっぱいになった口に突っ込むと塩っぽかった。


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