僕と私で友達
言われた通り、騒がしい家族が引っ越して来た。
朝の戦争状態が、壁越しに伝わってくる。
朝は朝で幼稚園へ行く時、よくエレベーターで鉢合わせになる。

あの頃は、一番上のお兄さんが、中学生。
二番目のお姉さんが、小学生。
そして、三番目が俺と同じ歳。
名前は鈴。
短い巻き毛のぐしゃぐしゃ頭が特徴的だった。

「なんだよ、お前」

何より口が悪かった。
ギョロギョロの目が鋭く俺を睨みつける。
友達になんか絶対なれないタイプだと5歳にして思った。
とにかく、性格が真逆。
俺が公園に行けば鉄棒から落ち、鈴は滑り台を段ボールに乗りながら滑りおり。

俺が犬に吠えられ追いかけ回されては、鈴はその犬を飼い馴らす。

俺が鳩にフンを落とされては、鈴は鳩を捕まえてくる 。

俺がボールを投げれば、鈴は石を投げ返す。

俺が新しい自転車を買えば、鈴は奪いにくる。

鈴は、たちまち近所じゃ悪名高い悪ガキへと変身していた。


< 3 / 23 >

この作品をシェア

pagetop