だから、お願い
『ん…………』
もぞもぞと動く拓也に、びくっとなり振り返り確認する。
起きたわけではないことが分かり、ほっとすると
そのまま携帯の電源を落とし、鞄にしまった。
ゆっくりとベッドに戻り、布団の中に入ると
そっと拓也の寝顔を盗み見た。
あどけない顔で眠り続ける拓也の顔は、あたしの心をいつだって揺さぶるのだ。
『拓也……』
まだ痛む腕をそっとさそる。
愛してる、と言う拓也の目には、あたしは一体どう映っているのだろう。
こんなあたしを、拓也はどんな思いで見ているのだろう。
こんなにも近くに彼氏という存在がいるというのに
あたしの心は、いつだって死にたくなるほどに孤独だ。
殴られた跡は、あたしに"誰かといた"ということを教えてくれる。
拓也は会う度に、あたしを殴った。
顔以外の場所を、跡が残るほどの力で、ただ一度だけ。
あたしが、拓也にそれを頼んだのだ。