だから、お願い
しばらくしてファミリーセットがあたしたちの卓の方まで運ばれてきた。
名の通りの量に、あたしと拓也は顔を見合せ、苦笑してしまう。
拓也が次々と網の上にお肉や野菜を乗っけていく。
それをじーっと眺めるあたし。
普通は反対なのかな。女が焼くものなのかもしれない。
せめてもと、取り皿を拓也に渡し、たれを入れてみる。
割りばしを割り、拓也のお皿の上に置く。
『ありがとう』と言われ、なんだか心が少し温かくなった。
焼けたものがあたしのお皿の上に取り分けられる。
『やだ、にんじんいらない!』
『あ?』
『にんじん!』
『好き嫌いすんじゃねえよ。全部食えや。』
そういいながら、何故かにんじんばかりがあたしのお皿の上に盛り付けられる。
それをじっと見ていると、拓也は少し悲しそうにあたしを見てきていた。