薔薇の棘と黒いかまきり【短編】
「そう考えた青年は、長く一定の土地にとどまったり、誰かのもとに長くいたりすることをなくしたのでした」
「悲しいはなしだね」
「そうかもねぇ」
私は不安になった。
最後の言葉でとても不安になった。
「かまきり」
かまきりは動かなかった。
「私を愛してしまうとは思わないの?」
頷くかまきり。
「私は人を愛する感情を忘れてしまったからね」
「それなら安心ね。私の傍から離れないね」