薔薇の棘と黒いかまきり【短編】
黒いかまきり
今日は私の16歳の誕生日。
前だったらたくさんの人が祝ってくれた。
私は薔薇の手入れをしながら昔の私の誕生日会を思い出していた。
「誕生日おめでとさん」
はっとして声のする足元をみると、普通より大きな黒い蟷螂をみつけた。
「だれ」
「私は呪われた黒い蟷螂。あなたは薔薇の姫だね」
私はその質問に答えなかった。
「やっぱり美しいね。誕生日プレゼントに私が面白い物語を聞かせてあげよう」
黒いかまきりは、私が何も言わないのにぺらぺらとはなしはじめた。
最初はきくつもりなんかなかったのに、かまきりのはなしは面白くて
いつの間にか手入れをする手を止めてはなしに聴き入ってしまった。