妖魔04~聖域~
和む世界

妖魔の里

「じーん、じんじんじん」

外から聞こえてくる声は、断じて蝉ではない。

「うるせえ」

俺は自分の家で心地よく眠っていた。

ゆっくり寝ていたのにも関わらず、不機嫌になる理由を作るのは一人しかいない。

「テメエか」

布団から起き上がり、扉を開けると見知った顔がいる。

「幼馴染にテメエはないと思うぞ」

目の前の女は無愛想な顔をしている。

女は着物を着ており、額の真ん中にはコアが出っ張っていた。

髪は長く、水色で染まっている。

「テメエはテメエだ、昼寝の邪魔はするな」

眠さのあまり、欠伸を放つ。

「そう言うな。私はお前が好きだぞ」

「嫌いになって二度と来るな」

「起こしてやったんだぞ。私に貢げ」

手を出したところを、力強く叩く。

「ざけんな、消えろ」

女は俺の言う事を無視して、屋内に不法侵入してくる。

出会った当初の初々しさはどこにもない。

「君は妖魔の里の中で高レベルなぐうたら男だな」

女は無駄口を叩きながら、俺の布団で横になっている。

「テメエはそれだけを言いに来たのか。面倒くせえ野郎だな」

「野郎じゃない。素敵すぎる乙女だ」

目をキラつかせるが、一切トキメキを感じない。

「余計なことは言わんでいいから今すぐ消えてくれ」

「愛し合った者は一言一言が大切だというのに、何故凡人にはそれが解らんのか」

胸を押さえながら、胸糞の悪い演技を始めた。

女は虚言癖があるらしい。
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