妖魔04~聖域~
「面倒くせえ」

再び長老の下へ行かなければならないのか。

「珍しい眼鏡を持ってるわね」

「ああ?」

前髪で片目を隠している女が傍に立っている。

長袖とジーパンという、里の中では奇異な恰好をしている。

里は殆どが着物と決まっている。

俺も着物には興味がなく、外界の衣服を着ている。

「笹原の姉か。何の用だ?」

「偉大な私の名前も思い出せないなんて難儀な頭の造りをしてるわね」

俺に対して失礼なのは、笹原冬狐だったか。

年上の幼馴染だ。

余計な事をする二人に囲まれていたおかげで、人生は台無しになっている。

指令を受けてないのにも関わらず、妹と一緒に外界に出たはずだ。

「用がないなら家にでも帰れ。俺は忙しいんだ」

「たまに里帰りをしてみれば、邪魔者呼ばわりする心のない鬼に出会うなんてね。私は相当不幸よね」

「ギャン」

ため息をつきながら、倒れている燕にエルボーを落とす。

ストレス発散を燕にしてるところ、冬狐も鬼に違いない。

「邪魔なんだよ」

冬狐と絡んでいると、余計な時間を食うことになる。

「いいけどね。あんたは黒い扉の前で悩んどけばいいし」

「おい、今なんつった?」

「あら?私は今プライベートなんだし、アポを取ってもらえないかな?」
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