妖魔04~聖域~
村人は彼女達を弱らせるために、沢山の石を投げつけました。

鍬などの農具を持ち出してきた村人もいます。

本当に殺されると思った妹は逃げることを決意します。

「姉さん、逃げるわよ」

姉は石が当たった時点で気を失っています。

妹は人間にはありえない脚力を持っており、逃げられる確証があります。

現代で言うならば、妖魔の目覚めは済んでいました。

村人を飛び越えると、どこへかは解りませんが駆けて行きます。

村から魔女を出したとなると、村人は役人達に目をつけられることになります。

だから、姉妹を外の世界へ逃すわけにはいきませんでした。

妹は姉を担いで山中を駆け抜けます。

小さな怪我を負おうとも、姉を守るためには無視します。

息を荒げながら、道も知らぬ険しい山を行きます。

どこへ行けばいいのか、安らげる場所を探しますが、近くには存在しません。

しかし、誰にでも限界はあります。

さらにいえば、暗い山道では足もおぼつかないのです。

妹は石に躓き、大きくこけてしまいます。

美しさも泥のせいで台無しになり、膝には大きな怪我を負ってしまいます。

これ以上、姉を担いで走れなくなりました。

「何でこんな目にあうのよ!」

村から遠のいたとはいえ、止まっていればいつかは追いつかれてしまいます。

「諦めたら姉さんが死んじゃう」

立ち上がろうとしましたが、姉を抱えての片足立ちは不可能に近かったのです。

妹は女性でありながらも、よく頑張ったほうでした。

「神様、私達が何をしたの?」

姉を助けられない悔しさから、妹は涙を流します。
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