妖魔04~聖域~
「姉さんは人助けをしただけなのに、恨まれるのは筋違いじゃない」

土を掴んでは投げましたが、苛立ちが消えるわけもありません。

姉は出血をしているので、のんびり出来ません。

「この世に優しい心は必要ないの?人に優しさを向けたら不幸になるの?」

「いい塩梅に不幸だね」

闇に紛れながら、白衣の少年が一人立っていました。

妹は、少年が突如現れたように見えました。

「歯車がすべてかみ合うとは限らない。それが違う生き物の定めだよ」

「何故、こんなとこに?」

救世主を見つけたような視線を少年に向ける妹。

「野生の虎と人とではわかりあうことは出来ない。共存するには時代が許さない。そんなものだよ」

「私の問いに答えてよ!」

「友愛の気持ちを持って助けたとしても、他人が受け入れてくれるなど勘違いも甚だしいのだよ」

「じゃあ、姉さんはどうすべきだったの?見殺しにしろっていうの!」

「見殺しにすればこうはならなかっただろう」

「姉さんはそんな事はしない!だって、優しいから、私の憧れだから!」

「だから、この結末を迎えた。結果的には最悪の不幸という行き止まりにたどり着いたのだよ」

「私達を笑いに来たの?なら、消えてよ!」

妹は必死に立ち上がろうとします。

ですが、膝に力が入らない以上はどうすることも出来ません。

「私が何の利益も生まない者に近寄ったりはしないよ」

「この状況で意味の解らないこと言わないでよ」

妹は、少年の言う事に戸惑いが隠せません。

「理解出来なければ、君にもわかりやすいように伝えてあげよう」

少年の口から悪魔の囁きが聞こえてきます。

妹にはそれが天使の抱擁とも取れました。

「最悪の状況から抜け出す方法を私は知っている」
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