妖魔04~聖域~
「出来るなら、村の思い出を消して欲しい。もちろん、私の事も」

「ほう、君はとても勇ましいな」

「全てを知って悲しい顔をするよりは何も知らないまま笑顔でいい」

妹の決心は、揺るぎはありませんでした。

「姉が全てかね?」

「私の全てを捧げてもいい相手だよ」

妹は笑顔を見せます。

「いいだろう。成功するかどうかは五分五分だが、君が望んだことだ」

少年は一人、二体を横にさせ手術を行います。

少年の腕は神の如く、横たわらせた体に刃物を入れていきます。

何時間と立たない内に、少年はその手術を全て終えました。

少年の手の内にあるのは二つの赤い珠。

中にあるのは妹の魂と姉の魂。

そう、少年が行ったのは契約妖魔へと成り代わる術式でした。

少年は二つの魂を違う体へと移し変えます。

先に目を覚ましたのは妹の魂が入った姉の体でした。

「姉さんの事頼んだよ」

彼女は自分の唇を姉の唇に重ねました。

起きないように離し、妹は立ち上がります。

「寝てる間にごめん」

ドアのほうへと歩いていき、最後に姉の顔を見ます。

「姉さんの事、今でも好きだよ。でも、お別れだから私のことは忘れて、姉さんは憧れの王子様を見つけて幸せになってよ」

妹は頬に涙を伝わらせながら、部屋を出て行きました。
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