妖魔04~聖域~
「すまない」

「王子様、痛みを分ければ軽くなる」

ロベリアが手を差し出す。

「ありがとう」

その上に自分の手を重ねると、ロベリアのコアが俺に移行する。

刹那、俺は白き鎧を纏う、異形へと変身した。

ロベリアの体をナンバー01に託し、お吟さんの様子を見る。

今もまだ苦しみに溢れた顔をしている。

「お吟さんを頼んだぜ」

「出来る限りの手は尽くそうじゃないか」

ラインを一瞥し、研究所の外へと出て行く。

熱風吹き荒れる世界の中で、見えるのは敵の影。

大蛇や、人を丸ごと飲み込めるような大きな口を持つ者、全長5メートルくらいの筋肉質で鉈を持つ者、羽を生やした一つ目がいたりと豊富なジャンルを揃えている。

見るからに凶悪な妖魔もいるようで、徒党を組むというのは怪しい。

誰かに雇われたと見ていいだろう。

『王子様、敵影、百』

「多いのか、少ないのか解らないな」

普通の人間ならの話で、妖魔となれば別だ。

身体能力、個人個人の能力。

どれを取っても、一人で闘うのはキツイくらいだ。

だが、やるしかない。

後ろにはお吟さんが、メンテナンス中で動けない状態だ。

声が届く位置まで距離を縮める。

「お前等に一つ聞きたい。人を殺す覚悟があるっていうのなら、自分が死ぬ覚悟もあるって事だよな?」

逃げようとは思わない。

死ぬのは怖いが、お吟さんを生かすためなら闘える。

「お前は一人でどうにかなると思ってるのか?」

「すぐに悲鳴に変わるオチだ」

「あの方はこいつだけを抹消すればいいとか言ってたけどよ、後ろの建物もやっちまおうぜ」

妖魔達は自分が死ぬ事がないとでも思っているから余裕があるのか。

それとも、すでに覚悟があるから余裕があるのか。
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